第218話 アナザー 二人の高森 その26

文字数 480文字

クラブの会合が解散を言い渡されてから、
角田護と泉加奈子と高森要(おれ)は同じ方向に歩を進めていた。

並んで歩いていたわけじゃない。
歓迎されてないのは解っていたので先輩の後ろを数歩離れてついていく。

「高森、後をついてくるな」
怒ったように振り返る角田先輩が、あまりにも子供じみて見え、俺はうかつにもクスッと笑ってしまった。

「ついてくるなって言っても、家、同じ方向にあるんですけど」
「……じゃあ、もっと離れて歩け」

「先輩ってほんとに子供みたいですよね」
「……喧嘩売ってる?お前」
「いいえ。ほんとのこと、言ってますけど」

「先輩は気に入らないことがあると学校休む癖があるでしょう?」
先輩の隣を歩いていた泉がぷっと噴出した。
「そうそう、なんで知ってるの?」
「清月の和菓子が大好きですよね」
「すごい。そうなのよ~」

「言いたくない事は執事に言わせて」
「あはははっ、見てきたように、なんでそんなによく知ってるの?高森君」
可笑しくて仕方ないと言うふうに泉がたずねてくる。
解ってるに決まってる。だって全部、体験した事なのだから。

帰りたい。元の世界に。

俺は眼を閉じた。
不覚にも涙があふれてくる。
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