第203話 アナザー 二人の高森 その11

文字数 720文字

「高森君、君は元の世界に帰りたいですか」
菊留先生は二杯目のブラックコーヒーを口に運んでそう言った。

「当たり前じゃないですか。この世界は俺の知ってる世界とあまりにも違いすぎる」

皆に知人扱いされないのも辛いし第一、番を張る俺なんて考えたくもない。

「私と知り合いだとすれば、向こうの世界の私も今、君を元の世界に返す事を考えているのでしょうね」
たぶん、そうだろう。菊留先生なら最良の策を考えるに違いない。

「ねぇ、ねぇ、向こうの世界にも私達っているのよねぇ」
「そうだけど」
「私、どんな感じの子?」
言われて改めて泉を見る。
「泉ってぜんぜんかわんない……と思う」
「へぇ、じゃ、佐藤先輩は?」
「佐藤先輩はいつも眼鏡かけてるけど」
「えっ、マジ?俺、そっちの世界じゃそんなに目が悪いの?」
佐藤先輩が驚いて問いただしてきた。
「そうじゃなくて、普段は能力封印の為にかけてます」
「ふーん」

「じゃぁ、私は?」
「智花先輩。こっちの方が強そうですね」
「えーっ、何それ」
「だって、先輩、さっき俺を助けてくれたでしょ」
「智花、普段のおてんばぶりが発揮されてよかったな」
茶化す佐藤先輩は平常運転だ。
「もうっ、うるさいなぁ、やむなしだったんだからね。普段の私はおしとやかなんだから」
「なら、僕は」
奥二重の双眸が探るように俺を見た。

「……」

角田先輩。
冷たいです。
眼を合わせるのが怖いくらい冷たいです。
でも、それは言えない。

「……あはは、あまり、変わらないんじゃないかな」
俺は取り繕ってあいまいな笑顔を浮かべた。

(にら)むなよ。角田。高森はお前のこと怖いってさ」
わーっ、佐藤先輩よけいな事を……。

「怖い?凪高で番を張ってる君が?僕を怖がるだって?」
角田先輩は軽蔑したような笑みを浮かべた。
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