第375話 アナザー 邂逅 その23

文字数 493文字

 突然、発火した。
 要自身が蝋燭(ろうそく)の芯のように。
 足元から立ち上ってくる青色の炎を(まと)って燃え盛っている。

 火は要を焼いたりしない。
 肺や呼吸器が熱風で苦しくなる事はなかった。
 あまりの現象に全員その場に氷ついた。

 破壊しろ!
 焼き尽くせ!

 要にしか聞こえない声。
 素直にその声に従った。

 要は衝撃波をはなって、あたり一面火の海にした。
 発火するはずのない砂利が火柱を上げて燃えあがった。
 全員がその場を飛びのいた。

「おい、角田、高森はどうしたんだ」
 我に返った佐藤仁が角田護に尋ねた。

「わかりません。でも、あそこには行きたくないって」
 仁はあそこと呼ばれた方を振り返った。
 ちょうど、三度目の火柱がドンという音ともに立ち上っていた。

 高森要はふらつく足でそちらの方へ歩いていく。
 焦った。
 このまま彼を行かせたら、ダメだ。
 きっと惨劇が起こる。

 仁は殺気みなぎる焔を纏った要を見据えた。
 口元に二本指をたてて、呪を唱え、要に向けて放った。
天地開闢(てんちかいびゃく)の理によりて、高森要を拘束する。縛!」

 呪は要が纏う炎に到達すると瞬時に消滅した。
 捕縛は不可能だった。炎は障壁の役割もはたしているらしい。
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