第197話 アナザー 二人の高森 その5 

文字数 549文字

公園のベンチに座って二人で話をしているとザザッと5~6人の不良に周りを囲まれた。

剃りこみ入った眉なしの双眸。
撫でつけたオールバックに着崩れた学ラン。
じゃらじゃら腰に鎖をぶら下げている。
髪は思い思いの色に染め見るからにヤバそうなヤツラだ。

「おい、お前、凪高の高森要だな。この間はようも舎弟を可愛がってくれたな」
『……凪高?そんな高校あったっけ……俺、そこに通ってる事になってんの?』

「面かせや。いい気になってんじゃねえよ。ただで済むと思うなよ」
『ちょっちょっ、ちょっと待て。普段ならこんな不良に喧嘩なんか絶対売らない!』
ハズなのにどうしてこんな事になってんの?
「凪高の高森‥‥…要?」
パニックる俺の横で泉加奈子はもっとパニックになっていた。

「うっそーん。ヤバい奴、助けちゃった。君、ほんとに高森要なの?」
「うっ、うん、そうだけど、いや、違う。それ、俺じゃないから。俺だけど俺じゃないから」

はたから見たら陳腐なセリフだ。
だがこの状況下でどう説明していいのか。わからない。

「おいっ、こらっ、わけわかんない事いってんじゃねーぞ」
「おい、そのスケもつれてこいや。落とし前つけさせて貰おうぜ」

俺たち二人、嫌も応もなく、もっと人気のない廃工場の裏に連行された。
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