第366話 アナザー 邂逅 その14
文字数 620文字
彼女は呪を唱えて、指で五芒星を描き、印を結んで裕也に向かって手を一閃させた。
裕也は右手だけを前にかざしてあえて平然と彼女の放った攻撃をその身に受けた。
裕也ほどの術者なら簡単に防げた攻撃だろう。なのに、なぜ。
「攻撃は終わりかな?じゃ僕のターンだね」
彼はそう確認すると、自分の右手を見つめた。
手のひらに大きな傷が走っている。
そこから、ぽたりぽたりと血が滴り落ちていた。
その手の平を地面に向けて。
口元に左手二本指を立てて呪を唱えた。
「亜空間転移!我が血を持って我は望む、開け門!」
腕 をまわして解き放った呪で周りの景色は一変した。
そこは彼の師匠がつなげたあの空間と同じ。
むき出しの岩石がごろごろ転がっている岩場だった。
辺り一面湯けむりが漂い、所々にある池はそれぞれが違う色を擁している。
たまっている液体は沸騰しているのか時折、ボコッ、ボコッと吹き上がってくる。
岩場のあちこちから間欠泉がふきだし、水しぶきが上がっていた。
すごい。流石、裕也だ。
彼の実力ははかり知れない。
こんな技まで使える術者は湖北一ノ宮の中にはいない。
響は息を呑んだ。
裕也は「フッ」と息を吐いた。
正直なところ術が成功した事に安堵していた。
こんな大技、成功する方が珍しい。
だから、あえてわが身を傷つけさせ、己の血を持って術を発動させたのだ。
裕也は身の程を知っていた。
自分は師匠の域に及ばない未だ発展途上の人間である事を彼は自覚していた。
裕也は右手だけを前にかざしてあえて平然と彼女の放った攻撃をその身に受けた。
裕也ほどの術者なら簡単に防げた攻撃だろう。なのに、なぜ。
「攻撃は終わりかな?じゃ僕のターンだね」
彼はそう確認すると、自分の右手を見つめた。
手のひらに大きな傷が走っている。
そこから、ぽたりぽたりと血が滴り落ちていた。
その手の平を地面に向けて。
口元に左手二本指を立てて呪を唱えた。
「亜空間転移!我が血を持って我は望む、開け門!」
そこは彼の師匠がつなげたあの空間と同じ。
むき出しの岩石がごろごろ転がっている岩場だった。
辺り一面湯けむりが漂い、所々にある池はそれぞれが違う色を擁している。
たまっている液体は沸騰しているのか時折、ボコッ、ボコッと吹き上がってくる。
岩場のあちこちから間欠泉がふきだし、水しぶきが上がっていた。
すごい。流石、裕也だ。
彼の実力ははかり知れない。
こんな技まで使える術者は湖北一ノ宮の中にはいない。
響は息を呑んだ。
裕也は「フッ」と息を吐いた。
正直なところ術が成功した事に安堵していた。
こんな大技、成功する方が珍しい。
だから、あえてわが身を傷つけさせ、己の血を持って術を発動させたのだ。
裕也は身の程を知っていた。
自分は師匠の域に及ばない未だ発展途上の人間である事を彼は自覚していた。