第213話 アナザー 二人の高森 その21

文字数 518文字

藤堂弘明と一ノ谷正人は、高校時代からのつきあいだ。
大学は違ったが、その後も交流が続き、メールで近況をやり取りする中だ。

「藤堂から聞いた。結婚と同時に外国人の子供を養子にしたって」
「はい。これがなかなかいい子で」
「全く、お前は変わってるな。どうすればそういう発想になるのか」
「話せば長くなります」
「じゃあ、話さなくていい」
「つれないですね。話くらい聞いてくれてもいいでしょうに」

しばらく目を伏せていた正人は顏をあげて義之をみた。
「……でっ、なんの用だ?」

茶がもったいないと言われたにも拘わらず弟子入り志願の裕也は、
冷蔵庫の中の麦茶をガラスのコップに入れて差し出してくれた。
義之はローテーブルの上に出された麦茶に手を伸ばして言葉を紡いだ。

「実は竜穴の事について、教えて欲しいんです」
「……竜穴?そんな簡単に説明できることじゃないしそれこそ、話せば長くなる」

「手短にお願いします」
「はぁ、義之、今ちゃんときいてたか?手短に話せる事じゃないって」

「ですから、手短にお願いします」
「ああっ、もう、わかった。出来るだけ端折って説明すればいいんだろう?」

正人は根負けしたというようにため息をついた。
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