第358話 アナザー 邂逅 その6

文字数 591文字

裕也は右側を走っていた男子高校生の顏を思い出した。
 黒髪で童顔。170くらいの身長に無駄に脂肪のついてない体躯。
 誰にでも好かれそうな彼。

「彼、高森 要っていうのか。はじめてだ。こんなの」

 裕也は瞳を閉じて、要がまき散らして行った彼の生命エネルギーの余韻に浸っていた。
 快い。こんなに相性のよい気を放つものを他に知らない。

「はじめてって何が?」
「こんなおいしい精気」
「……おいしい?」
「そう、濁りの無い透明な深い海を思わせる。
 いつまでもたゆたっていたい気持ちにさせられる」

 完璧に酔っている。

「詩的な表現だな。猫にマタタビ、裕也に精気か」
「ちゃかさないでよ。ほんとにそう思ってるんだけど」
 葛城一門の術者は世俗にまみれていない健やかなる精気を好む。

「高森 要って芸能人だぞ。世俗まみれだと思うけど」
「……そうだよね。でも彼の生命エネルギーはすごく綺麗だ。ほとんど穢れてない」
「そんな事がありうるのか?」
「実際にあるから面白いよね」

「はいはい、そうですか。でも高森 要は素人だろ。巻き込むなよ」
「素人?ほんとにそうかなぁ。なんか発展途上って感じがするけど」

 だが、開花すればこれほど強い能力者はいないだろう。
 そう思わせるに足る精気。
 高森要の隣を走っていた青年。彼にも同じものを感じた。
 だが、それは彼の比ではない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み