第248話 アナザー 二人の高森 その56

文字数 533文字

「なんですか?アナザーな高森君」

「それってコイツが見えなくなるって事だよね」
 彼は俺を指さして言った。

「そうですよ」
「オレ、コイツに言いたい事があるから消すのまってくんない?」

「アナザーな高森君。君の言いたい事はわかります」
「センセ、ほんとにわかってんのぉ?」

 彼は先生をうさん臭そうに睨みつけた。
 どうやら先生の能力を知らないらしい。
 彼は先生から目線を外し、くるっと踵を返すと俺と先輩の方にやってきた。

「お前の日記全部よんだ」
『知ってる。ずっと後ろで見てたよ』

「ほんとにお前ってつまんない奴だよね」

 彼は腕を組んで見下すような眼差しで俺に喧嘩を売ってきた。

『言うと思った。不満なんだろう?俺の日常が』
「ああっ、そうだよ。お前サイテー、仮にもオレならもっとかっこいい人生を送れよ」

『……かっこいいって?』
「オレの様に劇団で活躍したり、雑誌にのったり、表彰されたり、注目されろよ」

『……無理だよ。俺は君じゃない』
 彼は唇をひん曲げてダンと俺の顏の横の壁を拳で叩いた。
「お前、ほんとにむかつく」

 黙っていた。何をどう反論していいのか解らない。
 それに俺には彼がなぜこんなに怒っているのかわからなかった。
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