第42話 菊留先生の憂鬱 その8

文字数 817文字

放課後、部活そっちのけでカウンセリングルームにやってきた佐藤仁は、私の事を気に入ってくれたらしく、色々質問してきた。
その大半が超能力に対する質問だったので、自分の過去世の話も当然彼に話した。

「じゃあ、さぁ、先生って薬の力で作られたエスパーってこと」
「まぁ、そうですね、階級で言えばS級」

「S級ってどのくらいの力」
「瞬時に学校が消失するくらいでしょうか」

「すごい、よく能力が暴発しないね」
「一応、リミッターをかけてるので」

彼に両方の手にはまった指輪を見せる。指輪自体には何の効力もない。
指輪をすることで使える力が半減する。そう信じて暗示をかける。

「ふーん、アイテムはなんでもいいの?」
「いいと思うけど、このやり方が君に効くかどうかはわかりません」

「大丈夫、きっと俺にも効く」
「君の「俺と僕」を使い分ける基準って」

「信頼度かな」
「そうなんですか」

「だから、智花には俺だよ」
「大山さんと友達なんですか?」

「だって、同じ中学だったし」

そういえば、同じ崎津中出身だった。

「私と君との信頼度が増した所で一つ聞きたいのだけど」
「うん」

「大山さんの英語が非常に悪いのは」
「だって、そりゃ、先生、あいつ、授業中ねてるもん」

「寝てるって」
「だから、言葉通り」

「寝てるって言っても単語の一つや二つ頭にのこってても」
「あーっ、それ無理、先生に起こされてもぴくりともしないし、絶対完全熟睡してる」

「ぴくりともしない?……」
本当にそんな事があるのだろうか。

「そうそう、それも毎度毎度」
どおりで英語の先生が何とかしてくれって泣きついてくるはずだ。

「それにね先生、あいつ英語だけは勉強する必要を感じないって公言してるよ」

噂に違わずすごいポリシーの持ち主だ。
英語は勉強する必要がないと公言するだけならまだしも勉強しない事を実践している人間はそう多くないだろう。

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