第90話 先生のフィアンセ その14

文字数 913文字

次の日、交換留学生のアレン・ホワイトと一緒に登校した佐藤仁は妙に落ち着きがなかった。
家から学校に近くなるにつれ、だんだんと皆の視線が痛いと感じるようになってしまったのだ。
超能力を抑えるために使用していた眼鏡。
入学以来彼は一度たりとも、その眼鏡をはずして登校したことはなかった。

最初は単に顏を隠すためにかけていた。
最近では超能力を使わないようにするためのリミッターとして使用するようになった。
そして、その眼鏡は今、手元にはない。
聴覚も敏感になり周りのギャラリーの声と思考は手に取るようにわかってしまう。

『留学生の横に立ってるのは誰なの?』
『一年の佐藤仁じゃない?ほらっ、あのバスケット部に所属してる子』
『ええっ?佐藤君?眼鏡かけてないね。コンタクトかな』
『でも、なんかかわいいね。目立つしね。』
うわああああっ、俺、なんか可愛いとか言われてるし。

『あいつ、誰だよ。アレンの横にいる奴』
『一年坊じゃね。昨日、廊下でアレンの手を振り払ったアイツ』
『あいつかぁ、あいつ生意気な奴だったよなぁ~』
『一年のくせに留学生独占すんじゃねーよ。ばぁか』
『生意気だよな。一回焼き入れてやった方がよくね』
『だよな~』
わああああ~っ、そう言えばそんな事がありました。
焼き入れるとか言っちゃってるし。
嫉妬か?羨望か?
アレンの横に立つくらいの権利いくらでも譲るんですけど。

目立つちゃぁ、目立つよな。
アレンは昨日転校してきたばっかだし。
改めて傍らに立つアレンを見る。

菫色の双眸と繊細そうなプラチナブロンドの髪、俺より少し高い172センチで着替えがなかったので、背丈が同じオヤジの背広を着せて見るとこれが結構よく似合った。
アレンはこの学校に3月ほどしかいない。自由な服装で登校していいことになっている。

アレンの教科書もノートも敵陣に置いてきたから今日一日誰かに本を見せて貰う事にして、腹をくくって登校してみるとのっけからこれが間違いである事に気が付いた。

教室で起こった一連の出来事が学園中に知れ渡り二人の関係を取りざたするやり取りが駅のホームや電車の中。登校中の歩道で繰り広げられていたのだ。
いっその事、二人仲良く学校をさぼればよかったとつくづく仁は後悔した。
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