第326話 アナザー 護の笑えない理由 その10

文字数 601文字

 両親から確約を貰った事で俺は機嫌がよくなった。

 自室に戻った俺は角田先輩の携帯に電話をかけた。
 番号は暗記している。
 向こうの先輩と同じなら通じるはずだ。
 待つこと一分、すぐに出た。
 紛れもなく先輩の声だ。

「はい、角田です」
「先輩、俺です。高森要です」

「あっ、高森か……君から先輩と言われるのは変な感じだな」
「え、そうですか……俺には自然な事なんですけど」

 俺は努めて明るく言った。
 気にしてない風を装ったが内心ちょっとショックだった。
 先輩にしてみれば同じ学校でもない俺が、そう呼ぶことに違和感があるのは仕方ないかもしれない。

「退院おめでとう」
「ありがとうございます」
「急だったから驚いたよ」

 そう言えばそうだ。先輩には何も言ってなかった。
 木曜の夜遅く退院許可が出て金曜日の午後、先輩がお見舞いに来る前に退院してしまった。
 いつものように学校から直行して見舞ってくれたのなら先輩に申し訳ない事をさせてしまった。

「今日も来てくれたんですか?言うべきでしたね。すみませんでした」
「いや、いいんだ。それと明日だけど」
「はい」
「遊園地なんかいっていいのか?病み上がりだろ」
「平気です。……あっ、遊園地じゃなくて水族館の方がよかったですか?」
「いや、高森の好きな方でいい。退院祝いだし」
「さんきゅ、先輩、なら、やっぱり遊園地で」
「わかった」
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