第223話 アナザー 二人の高森 その31

文字数 546文字

 仁は瞬間移動(テレポート)で心辺りをピンポイントで回りながら、懸命に精神感応(テレパシー)で先生とコンタクトを取ろうとした。
「一体どこにいるんだ。先生」

 ほどなくして先生からコンタクトがあった。
『仁君』頭に響く先生の声。むろん肉声ではない。
『どうしたんですか?君の心に焦りが見えます』
『先生、お願いします。直接アレンの所に飛んで下さい』
『アレンの?彼は自宅にいるハズでは?』
『いいえ、先生、行けばわかります。すぐにお願いします』
『わかりました。何があったんですか?』
『……高森要が刺されました。出血がひどいです』
『そうですか……』
『すみません。先生』
『君が謝る事ではありません。ダイレクトで飛びますから。君もそこへ』
『了解しました。ではあとで』

 仁が再び結界内に出現したときには、すでに先生もその場に到着していた。
 現場を一瞥した先生は無言でまわりを見渡した。
 しばらくしてから先生は言った。

「……まずいですね。高森要君の魂がここにはありません」

「えっ?」
「どういう事ですか?」
 先生は驚くメンバー全員に言った。
「ただ単に気を失っているという事ではない。彼の魂が体から抜けているという事ですよ」

 先生は静かに断言してため息をついた。
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