第374話 アナザー 邂逅 その22

文字数 596文字

 心臓に響いた。
 握りしめた手を無意識に口に持って行った。
 体に震えが走る。
 
 嫌だ。行きたくない。
 あそこに何かいる。
 意識を持っていかれそうな何かが。
 拒絶したくなるような何かが。
 あそこにある。

 言い知れぬ恐怖が体を駆け巡った。
 行けばきっと俺はおかしくなる。
 直感がそう告げていた。

 俺は側に立っていた角田先輩の腕にすがった。

「俺、……行かなくていいですよね」
「……どうした?高森、顔色が悪いよ」
「……なんか。悪寒がして」
 イヤ、悪寒じゃない。

「やっぱり、今日外出は無理だったんじゃないのか」
 違う。そうじゃない。
「とにかく、俺、あそこには行きたくないです」

 言ってるそばから、足元がふらついた。
 なんだか、おかしい。
 引きずられる。引き寄せられる。
 あの火柱の方に。

 まただ。あの頭痛。
 俺は頭を抱えて先輩の足元にしゃがみ込んだ。

 得体の知れない傷みが脳を蝕む。
 それは耐えられないほどの激痛となった。
 ドンという音とともに二つ目の火柱が上がった。。
 眼の奥に火花が散った。

 とたんに理性が消し飛んだ。
 何かを破壊したい。

 凶暴な気分になった。
 俺はふらふらと立ち上がった。
 目の前に立っていた先輩を押しのけて。

「おい、高森、どうしたんだ」
 かけられた言葉の意味さえ理解してなかった。

 何かを壊したい。
 誰かを殺したい。
 この痛みから逃れたい。

 頭の中はその「思い」で一杯になった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み