第173話 幕間 おまけ編

文字数 901文字

角田護は例のファミレスで紫雀を見つけると、つかつかと歩み寄り机の上にバンと台本をたたきつけた。
「一体、なんなんですか。この台本!」
机の上に突っ伏して涎を垂らして寝ていた紫雀は、その剣幕にようやく体を起こして反応した。

「あっ、角田君、おはよ」
「おはようじゃありませんよ。どういうつもりなんですか。この台本」
「あん?この台本ン?」

紫雀は眼鏡をかけ直して机の上に叩きつけられて、しおれてヘナヘナになった台本をみる。
まだ、寝ぼけているのか。まともな言葉遣いができてない。

「どこか変?」
「変?変どころか。ここですよ。ここ」
「角田くん。脱いで」
「角田くん 意識不明の重体で」

「なんですか。この展開、セクハラですか。それともパワハラ?」
「あっ、ごめん。なんも思いつかなくて」
「思いつかなくてこの展開?あきれて読者が逃げていきますよ」
「あーっつ、そうかも。アクセス数激減してるわ」
「もう、嫌です。なんなんですか。この開き直り、僕、役おりますからね?」
紫雀はにやりと笑った。

「角田君、プロなんだよね。役者魂!でのり切りなさい。今やめたら契約違反だよ」
契約書をひらひらと頭の上でかざして見せる。
「ひどい、いつかやめてやる。こんな役」
言われて事が的をえていたのか。
角田護は、捨て台詞を吐いてプンスカしながらその場を出て行った。

「ほんと、酷いですよ。先輩の役って、いつも入院したりとか、学校休んだりとかじゃないですか。少しはまともな役回りを考えてあげないと」
紫雀の後ろで台本を読みこんでいた泉と高森が抗議してきた。
「うーん、そうなんだけどさぁ。角田君の話考えるとついついイジメたくなっちゃうんだよね。キャラは好きなんだけどねー」
「……キャラ好きなんですか」
「うん、大好き」
「そうは思えない!」泉と高森が同時に叫んだ。

「あら、だって言うじゃないの。可愛いと思っているとイジメたくなるって」
二人はあきれて紫雀を見た。
「処置無しですね。」「ほんと」
「作者の愛情が怖いわ……。」
作者のゆがんだ愛情につける薬がない。まだまだ角田護の受難は続くのであった。
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