第255話 アナザー 二人の高森 その63
文字数 455文字
佐藤先輩は俯 く俺の頭をくしゃくしゃと撫でまわそうとした。
でも、できないことに気がついたらしい。
「おやっ、ざーんねん」
側に立っていた角田先輩は伸びてきた手をパシッと跳ねのけていう。
「高森をからかわないでください」
「角田、お前ぜんぜんぶれないなー。さすが飼い主」
『飼い主って佐藤先輩、俺、ワンコじゃないし』
「いや、お前絶対ワンコだ。角田のそばにいると嬉しそうな顔になるぞ」
『いや、それは、あの』
だって、向こうの世界の先輩は仏頂面で俺を睨んでばかりで、怖かったんだから、いつもの定位置にいられて安心するのは当たり前だ。
「角田、たまには俺も高森をいじりたいぞ」
「だめです。いじっていいのは僕だけです」
「なんだ。その問題発言」
「先輩がそう言わせたんじゃありませんか」
そのじゃれ合いのような光景を彼はじっと見ていた。
憧憬にも似た眼差しで。
ズキッと胸が痛んだ。
……彼 が泣いてる。
心の中でずっと。
オレもその中に混ざりたいって思ってる。
でも、できないことに気がついたらしい。
「おやっ、ざーんねん」
側に立っていた角田先輩は伸びてきた手をパシッと跳ねのけていう。
「高森をからかわないでください」
「角田、お前ぜんぜんぶれないなー。さすが飼い主」
『飼い主って佐藤先輩、俺、ワンコじゃないし』
「いや、お前絶対ワンコだ。角田のそばにいると嬉しそうな顔になるぞ」
『いや、それは、あの』
だって、向こうの世界の先輩は仏頂面で俺を睨んでばかりで、怖かったんだから、いつもの定位置にいられて安心するのは当たり前だ。
「角田、たまには俺も高森をいじりたいぞ」
「だめです。いじっていいのは僕だけです」
「なんだ。その問題発言」
「先輩がそう言わせたんじゃありませんか」
そのじゃれ合いのような光景を彼はじっと見ていた。
憧憬にも似た眼差しで。
ズキッと胸が痛んだ。
……
心の中でずっと。
オレもその中に混ざりたいって思ってる。