第116話 先生のフィアンセ  その38

文字数 465文字

「藤堂、そんな、土下座までしなくても」
藤堂はキッとなって義之を見た。
眼が座っている。
立ち上がって義之のほっぺたをつねると言い放つ。
「お前も一緒に謝れ」
「痛たたったたた」

誰かさんを彷彿(ほうふつ)とさせる行動に辟易(へきえき)しながら横目でひかりを見ると、ひかりは耐えきれなくなったと言う風にくつくつと笑っていた。
羽交い絞めにあったまま義之は云った。

「ひかりさん、ちょっと、ひかりさん。助けて下さいよ」
「そっ、そんなこと言ったって……えーっと、藤堂さんでしたっけ。
 はじめまして、婚約者のひかりです」

「えっ、あっ?」
「あのぉ、義之さんを放して貰えます?」
「ああ、すいませんでした。つい」
 我に返って義之から手を放す。

「お一人ですか?どうです。ご一緒しません?」
『えっ?』
ぎょっとして義之はひかりを見るがひかりは全く気が付いていなかった。

『ひかりさん。一緒じゃなくていいから。ひかりさんってば』
そして義之の必死のゼスチュアもひかりには届かず、藤堂と一緒の席に座る事になってしまった。
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