第381話 アナザー 邂逅 その29

文字数 759文字

「でも、君達には必要な措置だったんじゃないのかな。
 あの時の彼、君達の手に負えなかったんでしょ?」

「この!云うに事欠いて!」
「よせ、角田!彼の言う通りだ」

 あのままでは要の力の暴走を止める事はできなかった。

「でも、佐藤先輩」
「ともかく今は高森が先だ。撤収するぞ」
「……はい」

「俺達はあんたたちの術に巻き込まれてここへ来たんだ。素直に向こうに返してもらえるかな」
冷静さを欠いた護の代わりに仁が言葉をつないだ。

「当然、最初からそのつもりだったよ」
裕也は片頬にえくぼを刻んで笑った。

「彼らは?敵なんだろ?こんな半端な攻撃でいいのか」

 地面に倒れている巫女の衣装をまとった女性と刺客たちを見て仁は言った。
 全員どう見ても、たいしたダメージを受けているようには見えない。

「ああ、そう。彼らは僕を抹殺しようとした。でも無駄だってわかればそれでいいんだ。
だから殺す気はない」

 眼の前の少年は物騒な事をサラリと言ってのける。
 響はその言葉を聞いて裕也らしいと思いながらも、葉月様がこれで大人しく引き下がるとは思っていなかった。

「……君は高校生なのか」
「そうだよ……よくわかったね。僕はよく中学生に間違えられるんだけど、」

 精神感応者の仁が彼の思考を読むのはたやすい事だ。
 この時点で仁は裕也が陰陽師の葛城一門を率いる当主である事もわかっていた。

「名前は葛城 裕也」
「……ふぅん。君は僕の心を読む事ができるのか」
裕也は面白くなさそうに言った。

「僕の個人情報だけあばかれるのは良い気がしないな。君達の名前も知りたいんだけど」
「……開成南三年の佐藤 仁だ」

「へぇ。君達は全員、開成南の生徒というわけか」

『厳密にはちがうけどな』
泉は開成東。高森は凪高の所属だ。仁は口まででかかった言葉を飲み込んだ。
 全部教えてやる義理はない。
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