第387話 アナザー 邂逅 その34

文字数 720文字

「先生、お願いします。五分後に離れに飛んでください」
「わかりました。五分後ですね」

「せんせ、ちょっとこっちにきて」

 仁に引きずられて先生は少し離れた木の陰に行き二人で内緒話を始めた。

「先生、高森の能力。ランクはSです」
「そうですか。彼は私以上の力を持っているという事ですね」

 要は通常の超能力に加え、パラレルワールドに飛ぶ特殊能力も備えている。
 先生には平行時空に飛ぶ力はない。
 仁が要をSだと断言するなら、それは菊留先生より上だと言ったも同じだった。

「あいつ、引き寄せ。消滅。治癒も使えます」
「それはすごい。でも解せません。
 そんなにすごいなら一人で向こうの世界に帰れそうなものですが」
「それなんだよねー。昨日アイツと電話で話した時は嘘を付いてない感じだったんです」
「ふーむ。きっかけがあって突然、こっちに来てから能力が目覚めたという事でしょうか」
「そうだと思う。俺じゃあ、勝てない。先生なら勝てるかも」
「なるほど。わかりました。ありがとう。仁君」

 角田護の側に戻った先生は言った。
「さて、角田君。行きましょうか」

 護は高森要をお姫様だっこをしてスックと立ちあがった。
 一見非力そうに見える護にそんな力があるようにはみえないのだが。
 日頃鍛えている彼は意外と筋力があるらしかった。

「うっ、先生、あっ、冷い、はやくっ」
「大丈夫ですか。角田君」
「高森の体が冷たいです。抱えるのも限界です。はやくお願いします」

 頷くと先生はすぐさま、角田家の離れの玄関に瞬間移動した。
 角田護は乱暴に靴を脱いで一番手前にある十畳の和室の襖をあけてもらって、高森 要を畳の上に降ろした。締め切った部屋の中はムッとして熱いくらいだったが、要の震えは収まらなかった。
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