第280話 アナザー 二人の高森 その88

文字数 560文字

「おはよう、高森くん、どう?その本面白いでしょう?」
 勝手知ったる病院なので自由気ままに歩きまわる彼女は、面会時間ではないにも関わらず高森 要の病室を訪れていた。

「うん、面白い」
「どこまで読んだ?」
褒姒(ほうじ)が幽王の後宮に入った所まで」
「そっかぁ。結構進んでるね」

「ひまだからな。今は宿題する気力もないし」
「そうだね。大変なめにあったもの。仕方ないよ」
「あっ、泉、いろいろ気を使ってくれてありがとう」

「うん。でさぁ、その褒姒っていう女の人、笑わないんだ」
「へぇ、そうなんだ。ってネタバレじゃん泉」
「ごめん。でも、それ、そういう話」
「ふーん。笑わない妾妃の話なのか。先輩みたいに?」

「うん」
「泉、なんで角田先輩は笑わないんだろう」
「……わからない。前からあんな感じだったけど、歳追うごとに酷いかな」

「泉はいつから先輩と知り合いなの?」
「小学校5年から、結構長いよ」
 向こうの泉と同じだ。
「小学生の先輩って性格が最悪で、会っていきなり握手拒否られたんだよ」
 うん、知ってる。向こうの先輩と全く同じだ。

「踊りの教室で知りあったんだろう?」
「そうよ。なんでそんなに詳しいの?」
「向こうの泉に聞いた」
 アナザーって言っても、全く違う訳じゃない事に泉は驚いていた。
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