第180話 桜花恋歌 その38

文字数 927文字

主様って桜の精の事か?
人間って角田先輩の事?
シュウゲンって結婚式の事だよな。

マジか……先輩をはやく見つけないと取り返しのつかないことになる。

能の舞台ってどこだ。神社仏閣か。
それとも城か。はたまた特設ステージか。
いかん、現代思考になってしまう。

あてもなく、村の中を彷徨(さまよ)っていると、
村はずれの四辻に傘を被ったお地蔵様を見つけた。
傘を失敬して、目深にかぶり、そばを通りかかったモノを捕まえ、話を聞く。

「おい、そこのお兄さん、祝言が行われるのはどこか知ってるかい」
「知ってるとも、鈴が森のお屋敷じゃろ。主様はそこにお住いじゃ」
「鈴が森って?」
「なんだい。あんた、新入りかい。鈴が森はあの家の奥にある森のこった」
「すぐわかるかい」
「わかるとも。屋敷の横の路地をいけばええ。森はすぐじゃけ」

すんなり行き先が判明した。
礼を言って別れ、傘をお地蔵様に返して手を合わせ言われた家を目指した。
他はかやぶきなのに、その一軒だけが立派な黒い瓦で(おお)われている。
地主か豪商の家なのだろう。

それにしても、ここは本当に木霊の心の中なのだろうか。
広い。それにすべてがリアルで触感を伴う。
薄紅のベールがかかっているように感じたのは最初だけで中に入ってしまえば、色のある世界になっていた。

栄華こいしき都の中の、桜恋歌。はやり歌。
都の姫の悲しき話。
紡ぎ紡ぎテ、伝え聞く。
無実の罪で都おわれ、無実の罪で流されタ隠岐に浮かびし籠り島。
愛しき人への恋文が……。フジツノ罪でトラワレテ……。
あらぬ噂に裏切りおうて自刃し果てた姫ごぜの今は昔の物語。

「何、それ、はやり歌?」
鈴が森の入り口でしゃがんで地面に絵を描きながら歌を歌ってた子供が気になってふと声をかけると一つ目の子供は顔を上げにっと笑い。

「知らない。お兄ちゃん、変な服」
要を見てキャラキャラと笑った。

『変な服か……。そりゃそうだ。みんな着物きてるからな』
 ティーシャツにジーンズなんておかしいに決まってる。

歌に意味などないのかもしれない。
ところどころ文章が抜け落ち、物語的にもなんだか筋が通ってないように感じる。
要は先へ急いだ。
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