第335話  アナザー 護の笑えない理由 その19

文字数 617文字

 同日 午前10時30分
 マンションを早めに出た高森 要(おれ)は角田家の馬鹿でかいゲート前にいた。
 約束の時間には30分も早い。
 でも、そのくらいの時間なら家の中に入れて貰えるんじゃないか。
 と期待してインターホーンの呼び出しベルをならした。
 かちゃりと音がして相手がでる。

「はい、角田家執事の田森でございます」
「はじめまして、あの、角田護先輩にお会いしたいんですが」
「どちら様ですか?アポイントをおとりでしょうか」
「はい、俺、高森 要っていいます。先輩に取り次いでいただけませんか?」

「護様より承っております。お約束は十一時ではありませんか」
「あっ、そうなんですけど、ちょっと早くついてしまって」
「左様でございますか。しばらくお待ちくださいませ」

 執事はそう言うとインターホーンを保留にしたらしい。
「渚のセレナーデ」が聞こえてくる。向こうの世界と同じだ。
 こちらの世界で向こうと同じものをみつける度に俺は切ない気分になってくる。
 暫くして保留が通話に切り替わった。
「どうぞ、護様がお会いになるそうです」
 それだけ告げられると通話は切れた。

 目の前の巨大なゲートが左右に押し開かれた。
 門から家までゆうに300メートルほどある。
 道筋にある樹木を鑑賞しながら本宅に向かい家の扉の前で再び呼び鈴をならした。
 重厚感のある扉が開き、先ほどの声の主、田森という執事がそこに待っていた。
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