第101話 先生のフィアンセ その24

文字数 512文字

次の週の土曜、めったに客人のこない菊留義之のアパートを藤堂弘明と中川という弁護士が訪れていた。恐らく詐称されたであろうアレンのデーターファイルとパスポート、ビザ、衣類、教科書等、個人の私物を一緒に持参してきていた。
誠道会と話がつきアレンのホストファミリーが菊留義之に移譲された証だった。

「いいか。菊留、養子の件は自分で解決しようとするな。
 日本国際事業団に相談依頼しろ。素人が処理するのは絶対無理だから」

弁護士の中川が部屋を辞した後で藤堂はようやく口を開いた。

「わかった。藤堂、色々とありがとう」
「アパートに来るときすれ違った青年がそうか?」
「ええ」
アレンを部屋に連れてきた次の日から彼とは一緒に暮らしていた。
今日、アレンは買うものがあるからと近くの本屋に出向いた後だった。
その道行きですれ違ったらしい。

「吸っていいか?」
許可を貰って煙草に火をつける。
頷いた義之は食器戸棚から弘明のためにしまってあった灰皿をだしてテーブルの上においた。
紫煙が煙草特有の匂いとともに部屋に拡散した。

「お前、ホントに難儀なやつだなぁ」
「どうゆう意味ですか。それ」
「自覚ないのか?」
「ありません」

だから、ほっとけない。一服して藤堂はため息をつく。
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