第23話

文字数 756文字

「だから……さっきレベル一緒って言ってたけど」
「うん」

「私、三歳から習ってたんだけど」
「僕もだよ」

「うそ、だって教室で見たことないし」
「親に仕込まれてたの、そろそろ教室通えって言われて 仕方なく通うことにした」

「へぇ、角田の若様、ミソッカス君もようやく親の眼鏡にかなう程度には踊りがうまくなったんだ」
「ミソッカスって言うな」

彼のアキレス腱らしい。真っ赤になって怒っている。

「ごめん、気に障った?私としては受けてもいいと思ったけど」
「どうして?」
「だって、面白そうじゃない?競う相手がいるって」

今まで歳の近い同レベルのライバルがいなかった。

「そういえばそうだね」
「ねぇ、お姉さん高校生の角田夢見さんでしょう?」

「うん、そう」
「名取試験受かったんだって、すごいね」

「名取」とは、ある一定以上の芸を認められた門弟に対し、その流派の「苗字芸名」を許可する制度のことだ。

なかなかその域に達する事は難しい。
ましてやその上の「師範」を目指せばかなり高度な技術が要求され、合格者は毎年ほんのわずかとなる。

「母上の期待の星、おかげ様でお姉さまを見習いなさいと日々、耳にタコができるくらい聞かされてる」

「名家って意外と大変なのね」
「うん」

「さっきの話、考えてみて、私はやってみたい」
「わかった。泉って意外と話せる奴だな」

「みんなそう言うよ」
「さっきはごめん」

「意外と素直、謝ってくれるとは思わなかったな」
「素直って言うな」

赤くなって照れてる。なんかかわいい。

「ねぇ、なんて呼んだらいいかな、角田君っていうのもなんか変な感じ一学年上だし」
「角田でいいよ」

「あっ、先輩、先輩でいいよね」
「……うん」

そんな話をして先輩と別れた。

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