第２１０話　アナザー　二人の高森　その１８

「あのぉ……先生」
「なんですか？高森君」

「俺、すぐに向こうの世界には帰れないんでしょうか」
「……高森君、君の気持ちはわかります。でも、私も万能ではありません。
　私は竜穴がどんなものかよく知らないのです」
「……でも」

　先生は重ねて言った。
「私も危ない事はしたくない。竜穴について詳しい知人がいるので彼を訪ねて、確認してからの方がいいと思います」

「じゃあ、その間、俺はどうしたらいいんでしょうか」
「……普通なら家に帰りなさいという所ですが」

家は間違いなくそこにあるのか？
家族は快く俺を迎えてくれるんだろうか？
考えると怖くなる。

「わかりました。もし君の家があるべき所になかったとしたら私の家に来なさい。
　場所は……知っていますか？」

「……すずかけ通りのアークシティマンション301」
「そうです。向こうの私も同じ所に住んでいるようですね」
「……はい」

「では、今日は解散にします」
皆を見回して先生は静かに宣言した。