第155話 桜花恋歌 その14

文字数 576文字

「なっ、なんですか、一体、先生までそんな事を」
角田先輩はその言葉にたじろいだ。いくら先生の言葉でもギャラリーが三人もいれば男同士でもやっぱり裸は恥ずかしい。

「ちゃんと理由を話しますから、ぜひお願いします」
重ねて先生は云った。

「………わかりました。先生がそう仰るなら」

先輩はそう言うと慣れた手つきで帯をほどきはらりと着物を畳の上に落とした。
続いて長じゅばんを脱いだ。身に着けているのはボクサーパンツと足袋だけ。

「角田君、見たいの背中です。後ろ向いて下さい」
先輩は支持に従ってくるりと体の向き変え肩越しに振り返った。

インドア派の驚くほど白い肌。
小さな頃、海で長時間泳ぎ太陽にあたって火傷(やけど)したかのように肌に水ぶくれが出来きて以来、極力、日焼けを避けてきた。サンスクリーンクリームは護にとって必須アイテムだ。

「ありませんね。風呂上りならよく解るんですけど」
白磁の背中を眺め、先生はため息をついた。

「人の体に『呪』をかけるのは気が進みませんけど……角田君、ちょっと我慢してください」
そう断った上で先生は呪を唱え先輩の背中に投げつけた。

「熱っ!」
上気した背中に浮かび上がる数字。
肌より若干濃い色でなぞられた漢字の『七』だ。

「やっぱり……」
「やっぱりって何ですか。これは一体どういう事ですか」
先生のつぶやきに先輩はようやく事態が普通で無いことに気が付いたらしかった。
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