第241話 アナザー 二人の高森 その49

文字数 707文字

 朝食を終えて自分の部屋に戻ったオレは、スクールバッグを持って玄関先で角田先輩が来るのを待っていた。
 その間、オレは玄関にあった姿見を見て何を思ったか。
 きっちり着込んだ半袖のカッターシャツの第一ボタンを外し、第二を外しカッターの裾をだして一番下のボタンまで外した。中の下シャツが見える。

『えっ?……なんでわざわざ着崩すの?』
「うん、これでよし」

 よしって……わけがわからない。
 角田先輩はこういう気崩しが大嫌いだ。

『服装の乱れは心の乱れ』などと蘊蓄(うんちく)を吐きながら、必ず着崩した制服を正しにくる。
 俺の日記を読んだのならそんな事くらいわかっているハズだ。

 昨日の今日で朝っぱらから喧嘩(けんか)を売るような真似が、よくできるなと俺はつくづくげんなりした。
 玄関口の壁に持たれて彼は、先輩が来るまでの間、左手でスマホを持ち右手で操作して何かを検索し読んでいるようだった。

 来客を告げるベルの音がなった。靴箱の上にあった置時計は7時30分を示していた。
 先輩はいつもこの時間に迎えに来る。
 ガチャリと扉をあけ出迎えるオレ。

「おはようございます。角田先輩」
「おはよう。たかも……り」
 答える彼は驚いたような顔をして眼を見開いたがすぐ不快そうに眉をひそめた。

「高森、どういうつもりだ。その服装」
「やだなぁ。先輩、いつもどおり直してくれないんですか」

「……自分で直せ。甘えるな」
 先輩は怒りを滲ませた声でそう言った。オレはおかしいと言わんばかりに笑って見せる。

「いつもならちゃんと直してくれるんでしょう?」
 先輩はオレを睨みつけたまま黙っていた。
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