第232話 アナザー 二人の高森 その40

文字数 585文字

「かったるー。そういうのを余計なお世話って言うんだよ」

オレは邪険に応酬した。
もうこうなれば意地の張り合いだ。
こいつの言うなりにはならない。こいつには負けたくない。

「お前さぁ、ほんとに高森かよ。似ても似つかん奴だな」
角田護の横で壁にもたれ携帯辞書を眺めていた佐藤仁は、パタリと辞書を閉じて言った。

「高森は思いやりのある優しくて素直な性格だ。言葉遣いは極めてマジメ。
 世間斜めに渡ってきました的なお前とは雲泥の差がある」

二人ともどんだけ、こちらの世界の『高森 要』に執着しているんだ。
面白くない。この世界の高森がどうであれ、今、彼の立場にいるのはオレだ。
オレの存在を認めろよ。歯噛みして怒鳴りたい気分だった。

「似てなくて生憎だったね。お前らの言ういい子なんてオレはとっくにやめてんの。
 オレに期待なんかすんじゃねーよ。ばぁーか」

「……角田、むかつくコイツの顏なぐってもいいかな」
佐藤仁はじろりとオレを見ると、なぜか角田護に了解を取った。。

「先輩、止めません。どうぞ、お好きに」
彼はあっさり承諾した。優等生面してるくせにそこは止めろよオレは思う。
「了解した」
云うなり、佐藤仁はファイティングポーズを取った。

生憎、駐車場には誰も居ない。
まばらに車が止まっていて喧嘩するにはもってこいの空間になっている。

オレは身構えた。
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