第404話 アナザー 先生の異変 その3

文字数 472文字

 亜空間転移の呪を解いて探偵事務所に戻った後。
 一ノ谷 正人はロクに口のきけない菊留 義之に代わって、高森 要に声をかけ、事務所から追い出した。

 事務所の応接セットに向かいあって座り二人は長い事、口をきかなかった。
 20分程経過して正人はようやく口を開いた。

「……落ち着いたか?義之」

 義之は「はあーっ」とため息をはいて両手で頬っぺたをパンと叩いた。

「危なかった。あやうく高森君を殺すところでした。」
「ほんとにひやひやしたぞ」
「すみません。一ノ谷君。君がいてくれてよかった」

「久しぶりにでたな。その暗示、まだ抜けないのか。」
「……まだですね。もう、大丈夫かと思っていましたが」

「ほんとにありがとう。一ノ谷君、でも君なら確実に私を止めてくれると思ってましたよ」

「最初から計算済みか?」
「ええ、まあ……」

「相変わらず、ずるがしこいな」
「賢いと言って欲しいですね。ずるは余計です」

「……でも、そうか。役に立ててなによりだ」
「……最近、よく夢を見るんです」

 義之は目線を足元に落とした。
「どんな夢だ」
 聞かずともわかっていたが、あえて正人はそう尋ねた。
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