第290話 アナザー 二人の高森 その98

文字数 471文字

「よくも、やったわね!生意気な」
 配下を一瞬にして消されて頭にきたのか、女はわめきたてた。
「もう怒ったわ。貴方には手加減なしで行くわ」
 すごまれても、義之は動じない。

「一ノ谷君。ほんとにいいんですね」
 義之は再度聞き返した。
「くどい。二度は言わない」

 女の命を受け、
 一斉に襲いかかってくる子蜘蛛の群れが火球を吐き出してくる。
 火の玉はすべて義之のバリアーにあたってシュンという音とともに消え去った。

 義之は正人の答えを聞いて覚悟を決めた。
 口元に二本指をたてて呪を唱える。
天地開闢(てんちかいびゃく)の理によりて、我は望む。滅せよ」

 上に放った衝撃波は木造の家屋全体を揺るがし、
 周りに群がってくる子蜘蛛を蹴散らして女の胴体を切断した。
 断末魔の悲鳴とともに天井から白濁した体液と巨大なジョロウグモの死体が降ってきた。

 鏡面結界が瓦解し、薄暗い元の廃屋の風景に様変わりした。
 と同時に巣に捕らわれていた裕也の体が地面に向かって落ちてくる。
「裕也!」
 叫んだ正人は彼の落下地点へ走り寄った。
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