第172話 桜花恋歌 その31

文字数 867文字

俺は放課後、泉と合流して和菓子屋により、
手土産を持参して角田先輩のお見舞いに行った事。

先輩と話をしていて俺の名前が先輩の口からでたとたん、桜の精霊に襲われた事を超人クラブのメンバー全員に話した。

「なるほど、泉さんの持っていた呪符で事なきを得たんですね」
泉は、怪異に出会う事が多いから、お守り代わりに呪符を持ち歩いていた。
当然、金縛りの解き方も知っていた。
泉は怪異全般にわたって何かしら縁のある少女だった。

「そうです。でもそいつを撃退した後。先輩の意識がなくなったんです」
「……そうですか。こんなに性急に事が進むとは思っていませんでした」
大番狂わせだと言わんばかりの先生の言。

「先生、角田は?」
「角田君、幽体離脱みたいなものですか?」

大山先輩が小首をかしげて聞いて来た。
大山先輩の力は幽体の状態で体から出たり入ったり好きな場所に行ける事だ。

「魂を抜かれているのは間違いがないでしょうね。でも、無理やり抜いているので、体に負荷がかかっている。そう言う事なんでしょう。このままでは角田君は確実に命を落とします」
先生はそう言うと俺に向き直った。

「リベンジしたいと思いませんか。高森君」
「したいです。俺、このままでは引き下がれません」

先輩がいなくなるなんて冗談じゃない。
あの夢を現実にしてたまるか。絶対に先輩の魂を奪い返してやる。
心の中でそう誓った後、俺は小さな声で先生に聞いた。

「先生、我が背の君ってどういう意味ですか?」
「はい?古典で習ってると思うんですが我が背の君とはですね。女性が夫や恋人、または男性に親しみを込めていう言葉なんですよ」

「へえっ、そういう意味なんですか」
「高森君、まじめに授業うけてますか?」
「えっ、あっ、もちろん」
ときどき、居眠りしてるなんて内緒だ。古典の授業は退屈でたまらない。
先生は「はーっ」とため息をついた。

「やっぱり、ちゃんと聞いてないんですね?」
超能力者(テレパス)なんか嫌いだ。先生は確実に俺の思考をよんでいるらしかった。
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