第199話 アナザー 二人の高森 その7

文字数 695文字

近寄ったら殺す的な不穏なオーラをまきちらしパツキン頭にこげ茶色のグラサン。
黒のカッターシャツに赤いタイ、スラックスをはいた極道さながらの相貌。
耳にピアスして襟元のボタンは外され、⒙金ネックレスがのぞいている。
その写真は今の俺と明らかに真逆だ……。

手つかずの黒い髪とデニムパンツ、ティーシャツにパーカーを羽織り……。
至って普通の凡キャラな俺。

穏やかな両親と恋愛小説の大好きな姉がいるあのノーてんきな家庭で、どうやったら、こんなにグレる事ができるのか。大いなる謎だった。

「ふーん、ほんとに似ても似つかんな。不良(こいつら)なんで高森ってわかったんだろう」
周りに倒れている不良たちを見下ろして佐藤先輩が言った。

「っていうか。智花、なんでそんな写真持ってんの?」
「高森君、なんかモテるのよね。ウチのクラスの女子がかっこいいって騒いでてさぁ。
この写真、私に送ってきたの」

理解できないが一定数不良に憧れる女子というのはいるらしい。

「へぇ」
ってことは、俺、今パツキン頭のソノ不良と入れ替わってんの?
うそだろ、いや、誰か嘘だと言ってくれ。俺の存在全力否定してるじゃないか。

頭を抱え苦悩する俺の横で佐藤先輩が言った。
「皆、とりあえず場を代えよう。先生待たしてるし、ここ、不良のたまり場みたいだし」
周囲を気にして頷く面々。
「あの、ちょっと待って、皆、超人クラブのメンバーでしょ。
 先生って菊留先生の事ですよね?」

「……」
しばらくの沈黙の後、角田先輩の冷ややかな声が響いた。

「……お前、何を知ってるの?」
奥二重の双眸が射貫くように俺を見た。
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