第220話 アナザー 二人の高森 その28
文字数 813文字
泉の瞳が不安そうな色を浮かべている。
「……凪の前の番長よ」
「前の?」
「そうだ。三か月前、お前にやられたのはオレだよ」
そして、番長が交代した。
「このままじゃメンツ丸つぶれなんだよ。たかもり」
静かな言葉の端々に怒りの響きを感じる。
「……そう言われても」
それは俺がやった事じゃない。この世界のオレがしでかした事。
ソイツは俺の襟元をつかんで立たせ、ずるずるどこかへ引きずって行こうとする。
角田先輩が椅子から立ち上がった。
「止せよ」
多岐はうさんくさそうに先輩を睨 めつけた。
「ああんっ。何か文句あんのかぁ」
凄む相手に一歩も引かない。
俺の襟首をつかんでいる多岐の腕に手をかけ無理やり引き離した。
「誰だ。お前、すっこんでろよ」
多岐の放った右ストレートをよけた先輩は鮮やかに前蹴りを決めた。
ダメージを食らって前かがみになった多岐は
どこからかナイフを取り出して鞘 を抜き放った。
「やろう!なめんなー」
そのまま突進してくる。
咄嗟 に体が動いた。
多岐と先輩の間に割って入った。
「あぶない!先輩」
「ばっ、馬鹿、たかもり。なんで庇 った」
抱き留められたが立っていられなくて、先輩の体を伝ってずるずると地面に崩れ落ちた。
悪意ある凶刃 を脇腹にうけて少なくない出血が地面を汚していく。
「……先輩……よかった。無事で……」
掠れた声で言葉をつむぐと
先輩は俺に向かって「それ以上しゃべるな!」と怒鳴った。
一部始終の凶行を見ていた泉は鋭い悲鳴を上げていた。
「ちっ」
多岐は舌打ちするとその場を逃げ出した。
「泉、落ち着け。佐藤先輩に連絡を」
「……うん、わかった」
泉が自分のスクバから、スマホを取り出して電話をかけ始めた所までは意識があった。
でも、そこまでだった。
下腹部の強烈な痛みに俺は、なすすべもなく意識を手放した。
「……凪の前の番長よ」
「前の?」
「そうだ。三か月前、お前にやられたのはオレだよ」
そして、番長が交代した。
「このままじゃメンツ丸つぶれなんだよ。たかもり」
静かな言葉の端々に怒りの響きを感じる。
「……そう言われても」
それは俺がやった事じゃない。この世界のオレがしでかした事。
ソイツは俺の襟元をつかんで立たせ、ずるずるどこかへ引きずって行こうとする。
角田先輩が椅子から立ち上がった。
「止せよ」
多岐はうさんくさそうに先輩を
「ああんっ。何か文句あんのかぁ」
凄む相手に一歩も引かない。
俺の襟首をつかんでいる多岐の腕に手をかけ無理やり引き離した。
「誰だ。お前、すっこんでろよ」
多岐の放った右ストレートをよけた先輩は鮮やかに前蹴りを決めた。
ダメージを食らって前かがみになった多岐は
どこからかナイフを取り出して
「やろう!なめんなー」
そのまま突進してくる。
多岐と先輩の間に割って入った。
「あぶない!先輩」
「ばっ、馬鹿、たかもり。なんで
抱き留められたが立っていられなくて、先輩の体を伝ってずるずると地面に崩れ落ちた。
悪意ある
「……先輩……よかった。無事で……」
掠れた声で言葉をつむぐと
先輩は俺に向かって「それ以上しゃべるな!」と怒鳴った。
一部始終の凶行を見ていた泉は鋭い悲鳴を上げていた。
「ちっ」
多岐は舌打ちするとその場を逃げ出した。
「泉、落ち着け。佐藤先輩に連絡を」
「……うん、わかった」
泉が自分のスクバから、スマホを取り出して電話をかけ始めた所までは意識があった。
でも、そこまでだった。
下腹部の強烈な痛みに俺は、なすすべもなく意識を手放した。