第392話 アナザー 護と要 その5
文字数 588文字
「先輩、お世話になりました。帰ります。俺もう大丈夫ですから」
ぎこちなく笑ってくるりと背中を向けた。
もう先輩の顏を見るのも恥ずかしい。
「……俺、開成南に転校する事になりました。転校したら仲良くして下さい」
「そうか。来るのか。南は部活入らないといけないんだけど」
それはよく解っている。
「高森はどこの部に入るつもりなんだ?」
「書道部に入ろうと思います」
俺はきっぱりそう言った。
向こうの世界に帰った時の事を考えるとやっぱり書道部で腕を上げておいた方がいいだろう。
こちらの先輩は弓道部だ。最初はそっちに入ろうかと思っていた。
でももう無理だ。先輩と部活で毎日顏を合わせるなんて、俺の理性が持たない。
俺の気持ちを知ってか知らずか。先輩はこんな事を云う。
「高森、是非、弓道部に入ってほしい。僕が一から教えるから」
「え、いや、だからその、書道部に行くって」
先輩は立ち上がって俺の前に回り込むと、黒曜石の瞳を輝かせ、唇に笑みをはいて両手で俺の手をぎゅっと握った。先輩、ずるいです。禁じ手です。それ。
「弓道部にはいってくれ。頼む。高森」
「……」
有無も言わさぬこの目力。
この目に見つめられるとどうしても従ってしまう。
これは一種の超能力じゃないだろうか。
結局折れるのはいつも俺。
「……はい」
向こうのときもこうだった。
先輩はやっぱり先輩だ。強引な所はちっとも変わらなかった。
ぎこちなく笑ってくるりと背中を向けた。
もう先輩の顏を見るのも恥ずかしい。
「……俺、開成南に転校する事になりました。転校したら仲良くして下さい」
「そうか。来るのか。南は部活入らないといけないんだけど」
それはよく解っている。
「高森はどこの部に入るつもりなんだ?」
「書道部に入ろうと思います」
俺はきっぱりそう言った。
向こうの世界に帰った時の事を考えるとやっぱり書道部で腕を上げておいた方がいいだろう。
こちらの先輩は弓道部だ。最初はそっちに入ろうかと思っていた。
でももう無理だ。先輩と部活で毎日顏を合わせるなんて、俺の理性が持たない。
俺の気持ちを知ってか知らずか。先輩はこんな事を云う。
「高森、是非、弓道部に入ってほしい。僕が一から教えるから」
「え、いや、だからその、書道部に行くって」
先輩は立ち上がって俺の前に回り込むと、黒曜石の瞳を輝かせ、唇に笑みをはいて両手で俺の手をぎゅっと握った。先輩、ずるいです。禁じ手です。それ。
「弓道部にはいってくれ。頼む。高森」
「……」
有無も言わさぬこの目力。
この目に見つめられるとどうしても従ってしまう。
これは一種の超能力じゃないだろうか。
結局折れるのはいつも俺。
「……はい」
向こうのときもこうだった。
先輩はやっぱり先輩だ。強引な所はちっとも変わらなかった。