第351話 アナザー 護の笑えない理由 その35

文字数 584文字

「ところで先輩、お腹すきませんか?
 そろそろお昼ですよね、俺、今日はお客様なんですけど」

「そうだった。僕は着替えてくる。
 食事は離れの方に用意してあるはずだから案内させるよ」

 そう言えば先輩は着物姿だ。
 着替えるんなら自分の部屋かな。

「先輩、試してみたい事があるんですけど」
「試してみたい事?」
「はい」

 俺は先輩の手を取った。
 眼を閉じて先輩の部屋を思い浮かべた。
 瞬間、ぐにゃりと空間がゆがんだような違和感に包まれた。

 眼を開いた。

 12畳程の洒落た洋室。
 先輩が仮病で休んだ時にお邪魔したあの部屋だ。

 壁にかかった枝垂桜の額縁。
 部屋の中央にあるカフェ風のテーブルとイス。右際にセミダブルのベッド。
 左側にシステムデスク、パソコンデスクと書棚が設置してあり、
 壁際に沿ってクローゼットがあった。

 先輩はせき込んでいた。
「いきなり……なんだ」
 言いながらまわりを見渡して驚きの声を上げた。
「ここは、僕の部屋……」
「やっぱり、今日は調子がいいや。テレポートしたの、初めてです」

 いや、初めてじゃない。前にもあった。
 この感覚……突然、頭に鋭い痛みが走った。

 学校の屋上で感じたあの痛みと同じだ。
 静電気に触れた時の痺れるような痛み。
 イヤな感じがする。
 気のせいか?
 痛みはすぐ治まった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み