第61話 謎の留学生 その3

文字数 1,000文字

菊留先生は、自分を落ち着けるように深く呼吸した。暫くしてから先生は言う。

「ローレンは、私の前世のファーストネームです」
「えっ?何だって」
「えっ、ほんとに?」
智花と俺は同時に呟いた。

「アレンのスナップ写真を見たときに自分に似てるとは思ったんですが」
「似てるって前世の先生に?」
「はい」

智花はケント紙の束が入っている袋から紙を一枚取り出した。
持っていたボールペンでさらさらとイラストを描き始める。

「アレンの髪って銀に近い金髪だよね。アレってプラチナブロンドって言うの?」
「そうです」
「目の色は紺?」
「バイオレットアイズ。
結構希少な眼の色で出現率は世界人口の2%以下だと言われています。
著名人では女優のエリザベス・テイラーが有名ですね」
「2%って少なぁー」
「確か、緑色の目が2%で、それ以下だと記憶してます。
 アルビノを患う個体に出ることもあるとか。」
菊留先生はさらに詳しく訂正する。

 アルビノとは、体にメラニンがない人たちで肌や髪の毛が基本的に真っ白だ。
 アレンは白人だが、肌の色に病的な白さはない。
 だが、その珍しい瞳の色まで前世の先生にそっくりだなんて、他人の空似にしては出来すぎた話だ。

「はい、出来た」
 智花はコミック用ペンマーカーで仕上げたアレンのイラストを見せてくれた。
 イラストのバックに花まで飛ばしている。流石は漫画家志望だ。

「うまい!」
「美化しすぎじゃないですか?」
「美化は少女漫画の基本だよ」
「もうちょっと、こう」

菊留先生は、白いコピー用紙にアレンのイラストを描きかけた。
「うわーっ、先生へたくそ!」
「手がグローブみたい」
「顔はへのへのもへじの方がまだましじゃね?」

遠慮のない批判に先生は絵を描くのをやめる。
絵心の無さはいかんともし難いらしい。ポリポリと頭を掻いて先生が言う。
「全く君たちは、容赦がないですね」
口調がいつもの菊留先生に戻った。

「さてと、(アレン)が留学してきた理由について検討してみましょうか」
超人クラブ第一回目の集会はこれが課題になった。

彼は一体何者なのか。留学してきた目的は何か。なぜ仁に接触してきたのか。
三人は出来る限りの想像力を駆使して検討を始めた。
彼に関するデーターがとても少ないのだから、現状を把握するのに想像力は必須条件だ。
ちゃんとした答えにたどり着く事が出来るのかは、はなはだ疑問ではあるが。

二学期の船出は波乱に満ちたものになった。
人生は色んな事が起きる。
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