第84話 先生のフィアンセ その8

文字数 532文字

仁は食事をして後かたずけをしている先生に声をかけた。

「じゃ、先生、俺、家に帰るわ。明日も学校あるし、それから」
アレンの腕に自分の腕を絡めて言う。
「アレン貰ってくから」
アレンが驚いた顔をして仁を見ている。

「えっ」
驚いたのは先生も同じだった。
「アレンは私の家に泊まればいいと」
「せんせ、やる事あるだろ」
「なぜ、そう思うんですか?」
「俺のサイドエフェクトがそう言ってる」
仁には予知の力はない。先生の心を読んだ。それだけだ。
それに一度はこの言葉を使ってみたかった。

「それに、ちょっとアレンと親睦深めたいと思って」
「へぇ~、解りました。くれぐれも気をつけて。仁君」
「先生、奴ら、うちに来る心配ないよね」
「脅しが効いていると思いますが、やばいと思ったらすぐ、こちらに来るんですよ」
「OK、じゃまた明日」
仁とアレンの姿がかき消すようになくなった。

先生は食器類を手早く洗って、椅子の背もたれにあった手拭いで手を拭き
サイドテーブルの引き出しにあったケータイを取り出し電話をかけ始めた。
察しのいい生徒に感謝した。
これから先の話は、アレンに聞かせたくない。
そんな気持ちを汲み取って、仁はアレンを連れて行ったのだ。
都合のいい解釈をしてしまった先生はこの時の仁の気持ちなど知る由もなかった。
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