第150話 桜花恋歌 その9

文字数 652文字

「……何で俺なんですか」
「嫉妬でしょうね。角田君といつも一緒にいるのは高森君でしょう?」

「……でも、教室も一緒じゃないし、同じ学年ですらない」
先輩と四六時中一緒にいるわけじゃない。

「そうですね。しかし、一番魂が近しい所にある。
 そういうのは人間より、精霊の方が敏感に感じ取るんです」

先生にそう言われて頬に赤みがさすのが判る。

角田先輩にはいろんな意味で惹きつけられる。
構内模試は常に上位にあり、教師の覚えもめでたい。
どんな事も卒なくこなす柔軟性。
踊りをやっているせいか。
敏捷性にすぐれバスケットボールなどの体育の授業も難なくこなす。
全く持って羨ましいを通り越して恐れ多い。そんな感じ。

しかも先輩は孤高の花だった。
同級生とは一定の距離を置き、休憩時間、いつもいるのは図書館の片隅。
話しかけると会話を拒まない代わりに特別に仲良くなる事もない。

そんな先輩の唯一の例外は俺だった。俺は誰もが認める先輩のお気に入り。
学校の行き帰りはもちろん、塾も部活もプライベートでも交流がある。
そりゃあ、先輩に憧れて、俺の立ち位置になりたい奴はたくさんいるだろうさ。

しかし、なんで人外の『桜の精霊』に嫉妬されなきゃいけないんだ。
しかも、俺、その桜に『宣戦布告』をつきつけられてるとか。
超ありえない展開なんですけど。

「近々、角田君は神隠しにあいます。
 その時、彼を助けてあげられるのは、高森君、君だけです」

きっぱりと先生は断言した。でも俺には嬉しくない言葉だった。
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