第287話 アナザー 二人の高森 その95

文字数 439文字

 正人が高校一年生の時、弟の悠斗はまだ小学3年生だった。
 猫っ気のやわらかい髪と二重でぱっちりしたチョコレート色の瞳。
 日に焼けた褐色の肌は健康そのもので笑うとかたえくぼがでる。

 正直かわいい!弟ってこんなにかわいいものだっけ。
 弟が生れたその日から正人はすっかりブラコンになってしまった。
 母親の代わりにミルクを作ってやったり、おしめを替えたり、
 夜泣きの時には抱き上げて外に出てあやしてやった。

 それはもうかいがいしくお世話をした。

「おにいちゃん、昨日の算数のテスト百点だったよ」
「おお、そうか。まあ、当然だ。教え方がうまいからな」
「ちがうよ。僕が一生けん命勉強したからでしょ」

 プーとふくれる顏が可愛くてわざとほめなかったり、
 自慢の弟だったからどこに行くにも一緒。
 友達に写真を見せながら弟の自慢をしていたこともある。
 そのデレデレぶりに友達がドン引きしていた。

 それがあの日、どうしてそうなったのか。
 正人はよく覚えていない。
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