第359話 アナザー 邂逅 その7

文字数 668文字

気を操る者。
 念を操る者。
 呪を操る者。
 二人とも陰陽師の自分には近しいものだ。

「欲しいな。彼、なかなかの逸材なんだけど」
「相変わらずわがままがすぎる。バディなんて一族の中から選べばいいだろ。」
「僕は火属性だ。水属性の葛城一門じゃ、僕にあう者なんていないよ。」

「火属性……うそ、だって、……裕也は直系だろ?」
 響は信じられないと言った風に目を見開いた。

「響って、僕の事何も知らないんだね。僕は直系じゃない」
 裕也は自嘲気味に言った。

「ああ、そうか。それで」

 得心がいった。
 常々、疑問に思っていた。
 嫡子である裕也がなぜ、身内にうとまれ命を狙われるのか。
 彼は血筋で選ばれたわけではなかったのだ。
 どうりでお家騒動が勃発するはずだ。

「高森要って裕也とそんなに相性がいいのか?」
「うん。きっと、彼の属性は火だ」
「ふうん」
 これほどまでに裕也が言うなら本当なんだろう。
「モノにしたい。協力してくれるよね。響」

 響は口の端に笑みを浮かべスッと膝をおり臣下の礼を取った。
「……一ノ宮様の命とあれば」

 裕也は不愉快だと言わんばかりに眼を細めた。
「そのフレーズ気に障る。いちいち言わないでよ」
「わかった。協力する。でも、彼の意思を尊重しろよ」

 サッと立ち上がった響は裕也の目線を追った。
 一ノ宮の当主は、物欲し気に高森要が消えた方角をいつまでも見つめていた。

 すごい執着ぶりだ。
 裕也が誰かに興味を持って、その者を側におきたいと口に出したのは初めての事だった。
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