第380話 アナザー 邂逅 その28

文字数 523文字

 立ち上がった角田 護は葛城 裕也に詰め寄った。

「お前、高森に何をした!」
 奥二重の双眸がアーモンド形の瞳を睨みつける。

「何って、どうか落ち着いて下さいよ」
「裕也。見てわからん奴には言ってもわからん」

 側に立っていた響は不機嫌極まりない顔つきの護をみてそう言った。

「ちょっ、ちょっと、暴力反対、僕は君たちと争うつもりはないんだけど」
 のんびりと応じる裕也の言葉に護は苛立った。

「何をしたのか、言え」
「ガス欠」

 裕也は肩をすくめて言った。

「ガス欠?」
「ガソリンがなきゃ車は走らないよね。高森 要にも同じことをしたんだ」

「なにっ、ふざけんな。どういう意味だ」
「彼に気吸引を施したんだ」

「つまり、気を吸い取ったってことだ」
 響が横から説明した。

「気を?」
「彼の生命エネルギーを九割ほど抜いたんだ。今の彼は臓器に血液を送る程度の気力しかない」

 護は要を見た。要は全速力で走った人間のように荒い呼吸をしていた。

「九割?やりすぎだろ」
「そう、やりすぎた。でもたぶん、温めて一日寝かせれば治ると思う」

「なんで、そこまでしたんだ」
「もともと、この術は妖退治用の技だ。人間相手に加減がわからなかった」

 (つか)みかからんばかりの護の剣幕に悪びれる様子もなく裕也は答えた。
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