第310話 アナザー 二人の高森 その118
文字数 544文字
三人でケーキを食べ終わった後、正人は言った。
「さぁ、裕也君、もう帰りなさい。学業に支障がでるようじゃ弟子としては失格だ」
「はい、じゃ、僕はこれで失礼しますね」
裕也は頷くと事務机の上に置いていたスクールバックを肩にかけて師匠と義之に一礼した。
彼が事務所の扉を開けて帰って行った後、正人が言った。
「義之、どう思う?」
「どうって?」
「……葛城裕也」
「ああ、彼ですか。彼は見た目どおりじゃないですね」
「やっぱりそう思うか」
「ええ、得体がしれません」
陰陽師の直系。大切な跡取りだ。一人暮らしではあるはずがない。
鬼になりかかった悠斗に主従の契約を持ちかける事からしても、並みの陰陽師とは一線を画している。
義之の『得体がしれない』という直感は正しいのかも知れない。
そもそも陰陽師という正統派の家系に生れた彼にとって正人は退魔師とは言え、歯牙にもかけることのない異端の存在だ。
その正人に弟子入りをしたいと申し出ること自体おかしな行動と言えた。
「彼は一体何を考えて私に弟子入りしたんだろう」
「さて、直接聞いてみてはどうですか」
「うん……そうだな」
正人はうわの空で答えた。
事務所の窓から見える景色はネオンが煌めく夜の街へと変貌している。
「さぁ、裕也君、もう帰りなさい。学業に支障がでるようじゃ弟子としては失格だ」
「はい、じゃ、僕はこれで失礼しますね」
裕也は頷くと事務机の上に置いていたスクールバックを肩にかけて師匠と義之に一礼した。
彼が事務所の扉を開けて帰って行った後、正人が言った。
「義之、どう思う?」
「どうって?」
「……葛城裕也」
「ああ、彼ですか。彼は見た目どおりじゃないですね」
「やっぱりそう思うか」
「ええ、得体がしれません」
陰陽師の直系。大切な跡取りだ。一人暮らしではあるはずがない。
鬼になりかかった悠斗に主従の契約を持ちかける事からしても、並みの陰陽師とは一線を画している。
義之の『得体がしれない』という直感は正しいのかも知れない。
そもそも陰陽師という正統派の家系に生れた彼にとって正人は退魔師とは言え、歯牙にもかけることのない異端の存在だ。
その正人に弟子入りをしたいと申し出ること自体おかしな行動と言えた。
「彼は一体何を考えて私に弟子入りしたんだろう」
「さて、直接聞いてみてはどうですか」
「うん……そうだな」
正人はうわの空で答えた。
事務所の窓から見える景色はネオンが煌めく夜の街へと変貌している。