第233話 アナザー 二人の高森 その41

文字数 703文字

オレは佐藤仁が目の前に繰り出してきた拳をパシッと受けとめた。

「おっと、顏はやめろよ。これでも芸歴8年だ。芸能人は顔が命っていうだろ」
「芸歴って?」

彼の手を払いながら言う。
「プロの劇団に所属してる」
「ふーん。身のこなしいいね。なんかやってた?」

質問しながら、今度はけりを入れてきた。
寸での所でよけて答える。

「少林寺拳法を少々」
「なるほど、自信満々なわけだ。確かに高森にはない気迫だな」

高森 要っていったいどんな奴だったんだ。
マジメでカワイイ?……気迫のない?……つまり大人しい?

可愛いはわかる。
童顔なオレはよく女子から可愛いと言われる。
ニキビ一つない艶々な肌と女の子に負けないプルンとした唇。
もともとのインドア派に加え、肌の手入れもおさおさ怠りなく。

そこそこ女子から告られる二枚目半。
奴がオレにそっくりなら当然カワイイはずだ。

加えて親の子育て方針で、幼少期から少林寺拳法と演劇学校の二足の草鞋を履かされている。
CM出演と劇団の子役って事で8年の芸歴キャリアがある。
だがそれがいけなかった。

学校内では目立つ存在だったらしく、高校に進学した途端。
先輩たちのヤキ入れのターゲットにされた。
むろん鉄拳で応酬し、番を張る多岐という先輩をたたきのめした。
そしてつい先日。学園のボスに祭り上げられる。

ボスはボスらしく気分を一新するために三日前に髪を金髪に染め、新しい学校でイザ、学園生活をエンジョイしようとした矢先に平行時空に飛ばされてしまった。

全く、不本意としか言いようがない。
気が付いたら人間関係の違う、全く別な世界に飛ばされていたのだから。
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