第103話 先生のフィアンセ その26
文字数 710文字
月曜の夜、馴染みの店のカウンター席で頬づえをついていた椚木ひかりはトロンとした目で自分の前に置かれたカクテルを見つめた。
お洒落なグラスに注がれたピンク色の液体、アクセントにチェリーが添えてある。
「どうぞお召し上がりください。ピンクレディでございます」
バーテンダーに勧められたグラスを一気に煽る。
「ちょっと、ひかりちゃん。貴女、いい加減にしなさい。
何杯目?こんなにへべれけになって。もともと飲めない質なんだから、自重しなさいよ」
隣に座ったホステスの美咲に窘められても全く止める気配がない。
ひかりは物憂げに美咲を見つめプイッと横を向いた。
「今日一日面白くないことがありました」
データ入力ミスが七か所、それ見つけるのに2時間も費やし。
会議用の資料は部数を間違えて印刷し、上司には説教食らって……。
原因は解っている。
「つまり、一日ぼーっとしてミスを連発したあげく飲み屋でくだまいてるって事よね」
「……なんか文句ありましゅか」
ろれつが回っていない。
「マスター、おきゃわり……。なんか別なカクテル」
「マスター作らなくていいから」
きつい口調の美咲にマスターは困ったように肩をすくめてみせる。
「まーすーたぁー、おかわりって言ってるでしょぉ」
そこまで言ってひかりは机の上にうつ伏せてスースーと寝息をたてて寝てしまった。
「ああ、言わないこっちゃない。普段はウーロン茶しか飲まないくせに。
やけになっちゃって、ひかりらしくないわよ」
美咲はひかりの反対側にあった椅子の上に彼女のバッグをみつけて中を探り携帯を取り出した。
アドレス帳を呼び出し彼女の言う「ゆき」がついた男性の名前を探した。
一人しかいなかった。登録された男性は彼一人だった。
お洒落なグラスに注がれたピンク色の液体、アクセントにチェリーが添えてある。
「どうぞお召し上がりください。ピンクレディでございます」
バーテンダーに勧められたグラスを一気に煽る。
「ちょっと、ひかりちゃん。貴女、いい加減にしなさい。
何杯目?こんなにへべれけになって。もともと飲めない質なんだから、自重しなさいよ」
隣に座ったホステスの美咲に窘められても全く止める気配がない。
ひかりは物憂げに美咲を見つめプイッと横を向いた。
「今日一日面白くないことがありました」
データ入力ミスが七か所、それ見つけるのに2時間も費やし。
会議用の資料は部数を間違えて印刷し、上司には説教食らって……。
原因は解っている。
「つまり、一日ぼーっとしてミスを連発したあげく飲み屋でくだまいてるって事よね」
「……なんか文句ありましゅか」
ろれつが回っていない。
「マスター、おきゃわり……。なんか別なカクテル」
「マスター作らなくていいから」
きつい口調の美咲にマスターは困ったように肩をすくめてみせる。
「まーすーたぁー、おかわりって言ってるでしょぉ」
そこまで言ってひかりは机の上にうつ伏せてスースーと寝息をたてて寝てしまった。
「ああ、言わないこっちゃない。普段はウーロン茶しか飲まないくせに。
やけになっちゃって、ひかりらしくないわよ」
美咲はひかりの反対側にあった椅子の上に彼女のバッグをみつけて中を探り携帯を取り出した。
アドレス帳を呼び出し彼女の言う「ゆき」がついた男性の名前を探した。
一人しかいなかった。登録された男性は彼一人だった。