第372話 アナザー 邂逅 その20

文字数 663文字

「この岩の向こうでバトルやってる」
 仁は(おれ)の疑問を読み取って背後の大岩を指さし答えた。

「二対五だ。この空間に俺達を連れてきた術者はその中にいる」
「二対五って。どっちに加勢するつもりなんですか」

「会話を聞いてると、二人の方はもともとやる気なかったんじゃないかな。
 五人の方が喧嘩売ってる感じかな」
「じゃあ、二人?」
「怪我負わせず、全員を再起不能にすればOKなんじゃね?」

 にやりと笑って仁は言った。
「そんな都合よくいきませんよ」
 角田先輩が答えた。

「とにかくこの空間は通常よりは身軽に動けるが、全く質量がないわけじゃないから岩に当たるとそれなりに傷が出来る。従ってケガをするな。以上」
「もう、むちゃくちゃなんだから」
 泉が不満そうに言った。

「あの、さっきから術者って言ってますけど」
「うん。相手は超能力者じゃない。たぶん陰陽師だ」
「陰陽師」

 俺は角田匠の言葉を思い出した。
『お前は陰陽師なのか?』
 こっちじゃ、そんなにメジャーな職業なのか?

「うん。メジャーだよ。公人として政府から雇われて仕事してるよ」

 答えたのは泉だ。
 俺はぎょっとして泉をみた。

「泉も、テレパスなのか?」
「うん。側にいる人の考えが少しわかる程度だけど。向こうの私はそうじゃないの?」
「向こうの泉の能力は残留思念を拾う事だった」

 一体どういう事だ。
 泉は笑いながら答えた。

「その能力はあるよ。かたいなぁ。高森君。
 こっちの先生はあるものは使え。磨け主義だよ」

 なるほど、全員磨いてるんなら向こうのメンバーより能力が高いはずだ。
「そうなのか……」

 俺は納得した。
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