第135話 泉と先生との出会い その12
文字数 634文字
「先生、聞いて下さい。私、……私」
泉の大きな瞳からぽろぽろと涙が落ちる。
先生はよしよしと頭を撫でた。
「一人でつらかったでしょう」
そう、つらかった。妖に追いかけられたことは数知れず。
どんなに怖い体験をしても誰も信じてくれない。
誰にも相談できない。友達に相談しても一笑にふされるだけ。
挙句の果てに変人、狂人扱いされて……。
いつしか、話題にすることを避けるようになって……。
皆の見えないものが視える。
幼い頃から泉はとても、孤独だった。
「最近、ずっと夜になると私の後ろをついてくる妖怪がいるんです」
泉の話を聞いた先生は眼を丸くした。
「後ろを?……そうですか。その妖、別に何もしてこないでしょう?」
「……はい。特には」
「まんまるの体に大きな口、二本の足がついている?」
「そうそう、その通りです」
「それは、べとべとさんですよ」
「べとべとさん?」
「大丈夫。後ろをついてこられるのは気持ち悪いかもしれないけど、悪さはしませんよ」
「そうなんですか」
「妖は怖くないものもいますよ。今度、ついてきたら、道の端によって『お先にどうぞ。べとべとさん。』と声をかけて下さい」
「それでいいんですか?」
「はい。べとべとさんは泉さんを追い越して先に行ってしまいますよ」
泉は涙を拭ってニコッと笑った。
「先生、やっぱり私、開成南を受ける事にします」
先生はクスッと笑った。
「そうですか。ぜひ、待ってますよ。泉さん」
泉の大きな瞳からぽろぽろと涙が落ちる。
先生はよしよしと頭を撫でた。
「一人でつらかったでしょう」
そう、つらかった。妖に追いかけられたことは数知れず。
どんなに怖い体験をしても誰も信じてくれない。
誰にも相談できない。友達に相談しても一笑にふされるだけ。
挙句の果てに変人、狂人扱いされて……。
いつしか、話題にすることを避けるようになって……。
皆の見えないものが視える。
幼い頃から泉はとても、孤独だった。
「最近、ずっと夜になると私の後ろをついてくる妖怪がいるんです」
泉の話を聞いた先生は眼を丸くした。
「後ろを?……そうですか。その妖、別に何もしてこないでしょう?」
「……はい。特には」
「まんまるの体に大きな口、二本の足がついている?」
「そうそう、その通りです」
「それは、べとべとさんですよ」
「べとべとさん?」
「大丈夫。後ろをついてこられるのは気持ち悪いかもしれないけど、悪さはしませんよ」
「そうなんですか」
「妖は怖くないものもいますよ。今度、ついてきたら、道の端によって『お先にどうぞ。べとべとさん。』と声をかけて下さい」
「それでいいんですか?」
「はい。べとべとさんは泉さんを追い越して先に行ってしまいますよ」
泉は涙を拭ってニコッと笑った。
「先生、やっぱり私、開成南を受ける事にします」
先生はクスッと笑った。
「そうですか。ぜひ、待ってますよ。泉さん」