第367話 アナザー 邂逅 その15

文字数 780文字

「先輩、こっち」
 後ろから追いかけてくる野次馬をかわして、あっちこっち逃げ回っていた高森要(おれ)は、先輩を誘導しせまい路地奥に入り込んだ。

「どこ?いない」
「まだ近くにいるハズよ。探せ探せ」

 付近を捜索している野次馬軍団を息をひそめてやり過ごす。
 バタバタと走り去る音を聞いてようやく二人、路地から出てきた。

「すごい、人気だな。高森」
 感心したように角田先輩が言う。
 ちがう。あれは人気なんかじゃない。
 俺のスキャンダルが雑誌にのったから、面白がって追っかけてきてるだけだ。

「違います。ただ、彼らは面白がってるだけですよ」
「今日は一日これかもしれないな。もう帰るか?」
「半日乗り放題券買ったから、勿体ないです。」

 俺は涙目で抗議した。
 どこの遊園地でも乗り物チケットの払い戻しはしてくれない。
 何も乗らずに帰るのは無念すぎる。当然、金額分は乗ってから帰りたい。

 ちょうど目の前に観覧車が見える。
「先輩、気にせず乗りましょう。観覧車ならいいでしょう?」
 植物園の中を通り、先輩を引っ張って観覧車の方へ行こうとしたら、
 背後から声をかけられて俺は振り向いた。

「おい、高森、角田」
「うげっ、佐藤先輩。泉、智花先輩も」
「よかった。みつかったぁ」
 見慣れた三人がそこにいた。
 三人共、私服だ。

 佐藤先輩はティーシャツとジーンズだったが。
 泉と智花先輩は、女の子らしい黒のティーシャツとギンガムチェックのスカートを身に着けている。
 ひざ下まであるスカートが風になびいて愛らしい。
 二人ともよく似合っていた。

「うげっじゃねぇ。全くお前らは、携帯の電源くらい入れとけよ。
 おかげで探し回るはめになったじゃないか」
「すみません。充電し忘れてて」

 言われて角田先輩は佐藤先輩に素直に詫びていた。
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