第8話
文字数 905文字
「信じるしかないかな。君がこんな手の込んだいたずらをする生徒には見えないしね」
先生は机の上に出された名刺を興味深げに眺めて、ケータイを取り出し名刺に書かれた番号に電話し始めた。
「私、田中というものですが、融資課の菊留さんにつないでいただけますか」
「はい、そうですか、在籍していらっしゃらない。……ではこちらの記憶違いでしょう。
お騒がせしました。それでは失礼します」
先生は電話を切った後、さらにケータイのプロフィール画面を呼び出して名刺と見比べている。
「何、見てるんですか?」
「私のケータイの電話番号さ、この名刺に書いてある手書きの電話番号と……すごい全く、同じだ」
「……」
「君が今まで体験したことが真実だとすると、つまりこうゆうことかな」
「異次元とか、異世界とかですか」
「厳密には違うね」
口をはさんだ角田先輩を軽く否定した。
「私は職業柄、いろんな小説や文献、歴史書や科学雑誌なんかにも精通しているわけだが」
「先生、もっと平たく言ってください。回りくどい説明はなしです」
「全く、君は容赦がないね」
先生は机の上に真っ白なコピー用紙をおいてボールペンで文字を書き始めた。
「君たちはパラレルワールドと呼ばれる多元宇宙の存在を知っているかな」
「はい、そういうSF小説なら読んだことありますけど」
「私たちの世界に似た空間が無数に存在しているという考え方だ。並行世界、並行宇宙、並行時空ともいうけど」
銀行員 菊留義之のいる世界
教 員 菊留義之のいる世界
二つの行を丸で囲み線でつないだ。
「君はこの二つの世界を行き来する謎の生命体という事になるね」
「俺、ふつうの人間ですけど」
「まあ、そうなんだけど、問題は君が何度もこの二つの世界を行き来しているという事実だね」
「……なんども……」
「ごく普通の人間ならこう何度も経験したりはしない。体験談を語る人はいるけど大抵は一回きりだったりする」
「救いなのは、二つの世界が非常に似通っていて行き来していることに気づかないほど君が不自由を感じていないという事かな」
なるほど腑に落ちる説明だ。
先生は机の上に出された名刺を興味深げに眺めて、ケータイを取り出し名刺に書かれた番号に電話し始めた。
「私、田中というものですが、融資課の菊留さんにつないでいただけますか」
「はい、そうですか、在籍していらっしゃらない。……ではこちらの記憶違いでしょう。
お騒がせしました。それでは失礼します」
先生は電話を切った後、さらにケータイのプロフィール画面を呼び出して名刺と見比べている。
「何、見てるんですか?」
「私のケータイの電話番号さ、この名刺に書いてある手書きの電話番号と……すごい全く、同じだ」
「……」
「君が今まで体験したことが真実だとすると、つまりこうゆうことかな」
「異次元とか、異世界とかですか」
「厳密には違うね」
口をはさんだ角田先輩を軽く否定した。
「私は職業柄、いろんな小説や文献、歴史書や科学雑誌なんかにも精通しているわけだが」
「先生、もっと平たく言ってください。回りくどい説明はなしです」
「全く、君は容赦がないね」
先生は机の上に真っ白なコピー用紙をおいてボールペンで文字を書き始めた。
「君たちはパラレルワールドと呼ばれる多元宇宙の存在を知っているかな」
「はい、そういうSF小説なら読んだことありますけど」
「私たちの世界に似た空間が無数に存在しているという考え方だ。並行世界、並行宇宙、並行時空ともいうけど」
銀行員 菊留義之のいる世界
教 員 菊留義之のいる世界
二つの行を丸で囲み線でつないだ。
「君はこの二つの世界を行き来する謎の生命体という事になるね」
「俺、ふつうの人間ですけど」
「まあ、そうなんだけど、問題は君が何度もこの二つの世界を行き来しているという事実だね」
「……なんども……」
「ごく普通の人間ならこう何度も経験したりはしない。体験談を語る人はいるけど大抵は一回きりだったりする」
「救いなのは、二つの世界が非常に似通っていて行き来していることに気づかないほど君が不自由を感じていないという事かな」
なるほど腑に落ちる説明だ。