第284話 アナザー 二人の高森 その92
文字数 721文字
昼が夜に転じ、陽が陰にかわる夕暮れ時。
暗澹とした室内の中。スマホの呼び出し音がなった。
なぜか軍艦マーチだ。スマホの持ち主はすぐに電話に出る事はできない状況下にあった。
そこは埃とカビが侵食しているであろう廃屋のなか。
近隣ではお化け屋敷として名高い町はずれの一軒家。ゆうに築200年は経っていると思われる。
往時は風格のある館であったに違いないが今はみすぼらしく荒れ果てていた。
持ち主は不在。市の依頼で取り壊しが決まっている。
だがイザ工事をはじめて見るとけが人が続出した。病人もでた。
作業員が気味悪がって仕事をしたがらなくなった。屋敷を取り壊すためのブルドーザーが動かなくなるなどの怪異が続いたため、困り果てた建築業者は市に相談した。
一連の出来事は「もののけ」の仕業ではないかということになり、その道のプロ、一ノ谷正人にお祓いの依頼が来たのだ。
土足のまま中に入り、畳のある部屋をいくつか通りすぎ、抜けそうな廊下を恐る恐る進むと20畳くらいある土間に出た。どうやら厨房らしい。古い釜土と井戸がある。天井は吹抜け。
そこまで来て一ノ谷正人は驚愕した。目の前に桂木裕也が立っていた。
「裕也君、どうして、君がここに」
「先生、よかった。来なかったら僕、どうしようかと思った」
学校指定のカッターとスラックスを身につけた彼は、心細げにスクールバッグを抱え、心底ほっとしたというようにため息をついた。
連日のように事務所に入り浸る裕也が自宅に帰った後に、この依頼を受けたはずだった。
いったいどうして彼がここにいるのか、理解できなかった。
もしかして、事務所で眠りこけている時に寝言でもいったのか?
暗澹とした室内の中。スマホの呼び出し音がなった。
なぜか軍艦マーチだ。スマホの持ち主はすぐに電話に出る事はできない状況下にあった。
そこは埃とカビが侵食しているであろう廃屋のなか。
近隣ではお化け屋敷として名高い町はずれの一軒家。ゆうに築200年は経っていると思われる。
往時は風格のある館であったに違いないが今はみすぼらしく荒れ果てていた。
持ち主は不在。市の依頼で取り壊しが決まっている。
だがイザ工事をはじめて見るとけが人が続出した。病人もでた。
作業員が気味悪がって仕事をしたがらなくなった。屋敷を取り壊すためのブルドーザーが動かなくなるなどの怪異が続いたため、困り果てた建築業者は市に相談した。
一連の出来事は「もののけ」の仕業ではないかということになり、その道のプロ、一ノ谷正人にお祓いの依頼が来たのだ。
土足のまま中に入り、畳のある部屋をいくつか通りすぎ、抜けそうな廊下を恐る恐る進むと20畳くらいある土間に出た。どうやら厨房らしい。古い釜土と井戸がある。天井は吹抜け。
そこまで来て一ノ谷正人は驚愕した。目の前に桂木裕也が立っていた。
「裕也君、どうして、君がここに」
「先生、よかった。来なかったら僕、どうしようかと思った」
学校指定のカッターとスラックスを身につけた彼は、心細げにスクールバッグを抱え、心底ほっとしたというようにため息をついた。
連日のように事務所に入り浸る裕也が自宅に帰った後に、この依頼を受けたはずだった。
いったいどうして彼がここにいるのか、理解できなかった。
もしかして、事務所で眠りこけている時に寝言でもいったのか?