第323話 アナザー 護の笑えない理由 その7

文字数 815文字

 この後、泉は俺の両親と主治医に連絡を取ってくれて、すぐに退院許可がおり、土曜には外出できるように計らってくれた。
 金曜の午後、俺は慌ただしく退院した。
 退院の手続きには母親が来てくれた。
 病院への支払いやら入院時の荷物の移動など、滞りなく済んだ。

 夕食は母の手料理で退院祝いを兼ねた、すき焼きだった。
 入院中ずっと、すき焼きが食べたいと思っていたので嬉しかった。
 姉と母と俺で食卓を囲んだ。

 今日からアナザーな世界で俺はオレになりおおせなくてはならない。
 破れかぶれだ。腹をくくった。
 食事が終わった後、自室に戻った俺は俺の世界でもう一人のオレがやった事をまねた。

 まずパソコンでネットを立ち上げ、オレのツイッターとブログを探し出して読み始めた。
 彼は意外とまめな奴で中学時代から日記を続けていてざっと三年半の長い記録が残っている。

 全部読むのは大変なので飛ばしながら読んだ。
 でも、読み進めるうちに無駄であることが判明した。

 彼は俺様系思考の持ち主。
 加えてストレートに物事を捉えない。
 何事も裏読みをしようと努力しているような気がする。

 根本的に考え方が合わない。
 彼になり切る事は諦めた。なりきれないなら我流でいくしかない。
 人間関係のチェックの為にここ半年分の日記を読みこむ。


 交友関係が広い。

 浅く広く……。薄っぺらさが目立つ。
 劇団。芸能界事務所。学校。ツイッター。塾。
 学校と塾にだけ対応すればよかった前の生活とはおお違いだ。

 ため息をついた。
 こんな広い範囲で関わってくるすべての人間に対応しきれない。
 せめて学校だけでも知ってる人がいないと気が休まらない。

 考えたくはないが、もしかしたら、向こうに還る事が出来ず、
 この世界でずっと暮らす羽目になるかもしれないのだ。
 だったらいっその事。

 俺はすっぱりと環境を替える事にした!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み