第151話 準々決勝、第三試合

文字数 1,689文字



 僕らはごちそうを堪能したあと、別荘への地図とカギをもらって王宮を出た。

「試合がどのくらい伸びるかだね。すぐに終われば、三時前には体があくよ」
「そうだな。特訓がわりに試合後から行ってみよう」

 第三試合は午後一時から。
 お昼ご飯のすぐあとだ。
 僕らが観客席に戻ったときには、ビーツ隊が会場に来ていた。相手のチームは白虎組の推薦枠。

 朱雀の推薦枠は蘭さんたち。青龍はゴライ。玄武は巨人のヴィクトリアパーティー。
 どの隊もものすごい強さだった。白虎組の推薦枠も、さぞ強いんだろうな。

「これより、準々決勝第三試合です。両チーム先鋒、所定の位置についてください」

 あッ! 僕は気づいてしまったぞ。

「シャケがいない!」
「ほんとだな。三村、いなくなってるな」
「ビーツパーティー、先鋒が昨日の人と違う」

「あれがアップルだよ。やっと到着したんだ」と言ったのは、デギル隊長。

 いつのまに来てたんだ。僕ら、けっこう好かれてるのかな? まあ、知りあいと話しながら観戦するほうが楽しいもんね。

 アップルさんは赤毛の弓使いだ。ここで弓使いが出てくるとは思ってなかったなぁ。たぶん、ふだんは後衛専門なんだろうな。前に出て戦って大丈夫なんだろうか?

 白虎組の推薦枠はゴールディパーティー。南国っぽい褐色の肌の人たちだ。先鋒は……なんだろう? 妙にどんよりしたドクロを首からたくさんさげた人。

「なんか変なふんいきの人だねぇ。猛」
「職業、呪術師、だってよ。兄ちゃん、あんなの初めて見たな」
「ん? 呪術師?」

 どっかで聞いたことがある。なんか知ってるぞ。

「呪術師……」

 僕が考えてるうちに、試合は始まった。

 さきに動いたのは弓使いだ。弓をかまえて、パパパっと何かしたんだけど、放った矢が見えない。呪術師にもあたってないし、エアだった? ふりだけ? なんで?

 よくわからないままに試合は進む。
 次は呪術師の番だ。
 呪術師、呪術師……やっぱり、つい最近、どっかで聞いたなぁ。

 呪術師って言うからには魔法使うのかなと予想した。でも、呪術師がとりだしたのは長槍だ。それもイヤぁな感じのするやつ。持ったら呪われそう。

「あッ! 思いだしたー! 呪術師って、前にシルバースターで買ったツボだ」

 ぽよちゃんの小鳥師といっしょに買ったツボ。まだ使ってないけど、そうか。じっさいに呪術師で戦ってる人もいるんだな。

 でも、あれってたしか……。

 思ったとおりだ。
 会場のまんなかで、ヤリを手にかけだそうとした呪術師は、とつぜん立ちどまった。自分の足にもつれて倒れる。

「あっ、かーくん。呪術師、マヒしたぞ」
「…………」

 そうだ。たしか、呪いつきの装備品を装備した数だけ、力の数値が十倍ずつあがっていく職業だ。

 あの呪術師のどんよりした感じは、呪いの装備のせいだ。あのふんいきだと、少なくとも二つ、多ければ三、四つは呪いの装備をしてるんじゃ?

「猛。あの人の力の数値、どうなってる?」
「おおっ、スゴイな。力二万だ。ほかは百や二百なのに、力だけやけに高いな」
「それ、たぶん本来の数値の百倍だよ」

 呪術師……動けさえすれば最強なのかもしれないけど、動けないんじゃ意味ないなぁ。

 しびれてるうちに、呪術師のターンは終わった。

 次はアップルさんか。名前は女の子っぽいけど、残念ながら男。
 またあのエア弓矢をパパパパっと何回かやった。何も起こらない。何がしたいのか、ほんとわかんないなぁ。

 次の瞬間だ。しびれのとけた呪術師が走った。今度は呪いの影響を受けなかったようだ。

 ああ、これはもう決まったな。二万攻撃力だもんな。

 ところが僕がそう考えたとき。呪術師の体は大きくふっとばされた。金色の筋のようなものが雨のように呪術師に降りそそぐ。

「か……カウンター?」
「いや。あれがアップルの得意技、防御弓だ」と、デギルさん。
「防御ですか」
「目に見えない矢を空間に多量に放ち、相手が攻撃してきた瞬間にいっせいに襲う。カウンターと違うのは自分が倒れたあとも残るってことだな。本来は仲間を守るための技なんだ」

 ほへぇ。ほんと、いろんな技があるもんだ。
 試合って楽しいな。
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